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TOKYO CINEMA UNIONの活動

 

TCUの活動・根底にあるもの

アーティストが良い作品をコンスタントに制作できて初めてファンができる。コンスタントに制作できる現場でアーティストの技術も磨かれる。
コンスタントに継続的に活動する中で活動そのもので収益を生んでアーティストに還元していく。
サステイナブルなアート創作の環境を育てていきたい。そのためにはアーティスト同士のサポートが必要
派手なことではなく草の根活動です。創作を続けること、そしてそれをしやすい環境はアーティストお互いが参加することで可能になる。

今までの課題

芸能界が成熟化している日本では商業的に機能するために分業化が進んだと思います。それは日本だけではありませんが、日本の場合はまた独特でお役所仕事と同じで隣で何をやっているのかわからない、興味さえ湧かないようになってしまった部分は多少なりともある。
欧米では分業化がある一方で創作現場に役職や立場を超えた共同で創作する空気が流れている。同時にユニオンという存在があることでお互いの立場が尊重され守られている。日本の場合は搾取されることの方が多いように経験上思う。
こうでなければプロじゃない、というような思い込みが生まれるとクリエイティブなアイデアも浮かばないし、実は生産性も下がるのではないか?これも現場での経験から感じた。効率性をあげる分業化が結局のところ人間の思考停止を生んでしまっている節はある。
今までの業界のルールに従っているのではなく、オープンマインドで良いものをどんどん取り入れてみてはどうだろうか?
マーティンスコセッシ監督が言っています「映画業界の真似ではなく、新しい業界を作りなさい」
もっと創作に参加する全員が共同で創作しているという意識をもつ、このシンプルなことをするだけで多くのことが良い方向に向かうと思っている。


どこから始めるか? | 映画編

2021年版

2015年に映画IN ANOTHER LIFEを制作した。それはIFFミラノ映画祭で最優秀監督賞を受賞し、出演者たちの演技に注目が集まった。
この作品はただ創ったわけではない。「どこから始めるか?」を考えた。

私は以前から欧米の映像制作に多く携わってきた経験からいくつか試したいことが頭に浮かんでいた。
・資金・技術力・演技力・作品コンセプト

欧米ではインディペンデント映画は商業映画なので資金集めをするプロセスはごく普通。日本では残念ながら熱意ある監督がアルバイトで貯めたお金をスタッフやキャストがむしり取る形で創られる。つまり熱意ある監督がいるから辛うじて持っている業界になっている。挙げ句の果てに「ギャラが少ないなぁ」と物差しにかけるスタッフやキャストがてて来る始末。口に出す者も実は少なくない。ここには雇われ精神がはびこってしまっている。私はフリーランスの監督業に見切りをつけ映像制作会社を設立し、そこで資金を貯めて
TCU映画制作に回すようにした。もちろん低予算ではある。

技術面に関しては正直に言ってなかなか撮影や照明スタッフがボランティアで映画を作るというのは耳にしないので難しいと判断した。普段CMやテレビの仕事でお世話になっている撮影部・照明部でもお金がかかるしその額を考えると撮影日数を3日取ることは難しい。私は海外のドキュメンタリーを多く手がけてきた現場の経験から、海外の多くの監督が自分でカメラを回す姿をみてきたし、私自身も現場でそうさせられてきた。2020年の今でこそその流れが主流になってきているが当時はまだまだだった。そこで技術面も自分でカバーし荷物運びなど必要な時にスタッフを入れることにした。

作品のコンセプト。これも非常に大切。「好きな作品を撮る」は大切だがこれだけではダメだ。作品もどのコンセプトをどう言った順番で創っていくのか?これをしっかり計画できなければ。今までプロとして業界にいたのでその点は慣れていた。複数の作品の企画書を作成し、どの作品が今やるべき作品か、現実的に可能な作品かをしっかりと考える。ネットフリックスや他のメディア媒体から企画書を依頼される事があるが多くの会社もその成長の過程で今出すべき作品というものをしっかりと考えている。2015年当時はIN ANOTHER LIFEのコンセプトが一番ぴったりハマったのだ。自分たちの今の現状のリアリティを描くこと。

無名の監督と無名の俳優で作る作品で、次に繋げていくために絶対な必要条件は作中の圧倒的な「演技力」。
つまり2015年の段階ではスタッフとキャストを集める事が課題であり、キャストの圧倒的演技力が課題だった。


みんなで創る

知人の映画配給会社オンリーハーツの社長O氏に伺ったところ、世界には二人だけ脚本がなくてもパトロン的出資者が資金を提供してくれる監督がいると。
一人はコメディの巨匠ウッディ・アレン監督。もう一人がイギリスの巨匠マイク・リー監督。マイク・リーの作り方は、俳優をまず集めて人生について語り合う。それぞれの想いを。そこからインスパイアされて作品を書く。それもメモ書きのような形だ。俳優が脚本作りから関わったいるようなものだ。俳優が雇われ意識で現場入りするのではなく、あらゆるプロセスを自分の芝居に活かしていく。

海外で映画を学んだ自分としてはこの空気感は非常に肌にあった。日本の無名の俳優たちにもっと表現は自由であり、どのプロセスにも関わっていいのだよ、楽しいのだよ、ということを伝えたかったし、そうする事が結果作品を良くする。例えば名作タクシードライバーの主演ロバート・デ・ニーロはタクシーの運転手役を演じるために実際にタクシー運転手になった

デニーロは実際タクシーの運転免許証を持っている。何より彼の運転の経験も結果として映画に反映されて作品として残った。忘れてはいけないのはこの時彼はすでにゴッドファザー2で大ブレイクし、アカデミー助演男優賞をとっていた。演技を愛している。

俳優のラッセルクロウは映画「LAコンフィデンシャル」の経験を語った時次のように答えた「演技の準備リサーチは俳優の特権だ。準備をたくさんすればするほど、それが劇場のスクリーンで如実に現れる」彼の役は巨漢だったがラッセル自身は小柄だった。そこで彼はLAの中でも本当に小さなアパートを見つけてそこで暮らすことで窮屈感を味わった。
それにとどまらず「INSIDER」の役作りでは髪の毛の色を白髪にしたいと提案し、それが彼の役にリアリティをもたらした。

女優ケイトブランシェットは自分でメイクをしたりメイクのアイデアを提案するという。同様に「バットマン」のジョーカー役ヒース・レジャー。彼はあの作品で衣装やメイクのアイデアを自ら考案し監督に提案し自分の役作りを深めた。

マシュー・マコノヒーもインターステラー出演の時実際のコーンフィールド近くのトレーラーに住み着いたそうです。オリンピック選手と同じトレーニングメニューがこなせないにしてもそこを目指してはどうか?

俳優は自由に自分の世界を深めるために実際の職業についてみたり、体験してみたり、実際の家に住んでみたり、メイクや衣装や髪型を自分でテストして身体で感じる事ができる。監督から頼まれてやることではなく、いつでも自分で出来る。この遊び心と冒険心を日本の俳優にも持って欲しい。
この冒険心さえあれば映画は良くなると私は知っていたし、それをTCU映画で予算がなくても出来る範囲でやろうということになった。

IN ANOTHER LIFEでは制作部や演出部だけをこなすスタッフを一切雇わなかった。技術部(撮影部や照明部)と同様に通常お金がかかる。私がクライアント仕事で予算がある現場ではもちろんそういったスタッフを入れる。だからこそそういったスタッフの有り難みもわかるし、逆に弱点も知っている。TCU映画では資金がそれほどなかったのでそういったスタッフを雇わずに全て俳優にお願いした。例えば自分が演じる役が住むアパートはどんなアパートか?部屋はどんな物が置いてあるか?美術部にお金を払ってつくてもらう現場も、大きな仕事では必要だが小さい映画では俳優がやったほうが自分の世界観を作る事ができ、演技にリアリズムが生まれる。皆さんもテレビドラマを見て衣装に着せられて不思議なほど綺麗なセットの中を歩き回るタレントの不自然な世界観を体験した事があると思う。大金をかけてもリアリズムに目がいかないということはザラなのです。IN ANOTHER LIFEは多くの俳優たちが役作りの一環として映画制作の準備に携わってくれたことで出来上がった。

前作ではキャストが自分の役が住む家やロケ地を見つけたり作り込んだりしました。海外の映画祭で俳優の演技のリアリティに驚く方もいました。映画はもちろんお金がかかります。しかし一人一人がもう少し意識を傾けて関われば芝居の深みが一気に出て、予算とは比例しないほど作品のクオリテイを上げてくれる。そういう体験をしたのです。
そういう背景もありなるべく俳優の皆様にも準備に協力いただいています。予算がないから、という安易な発想ではありません。

キャストが制作をサポートすることは、強制ではありません。どのような形や度合いでもそれぞれが人ごとではなく「自分ごと」という意識を持ってもらいたいのです。そしてできる限り関わることが作品や役作り、自分の成長を深めることも12年の映像制作会社での経験で私が感じたこと。黒澤明監督が言っておられました「関われば関わるほど好きになる」分業化は素晴らしい面がもちろんたくさんあります。しかし人が機械のようになって思考停止になることも多々あります。

そしてインディーズ映画という限られた資源の中で作る作品の質をどこに求めるか?それは予算ではなく人のコミットメントです監督の速水自身も会社経営と20年の映像制作の経験でそれを感じていました。大掛かりな予算のCMなのになぜこんなにできることが少ないのか?数百万かけて数千万かけてこの程度のことしかできない・・・というジレンマは過去にたくさん経験しています。

以前製作した経験で、予算をふんだんに使ったこともあります。楽屋を準備し俳優をそこで待たせてヘアメイクも衣装もつけてやったこともあります。CMでも映画でもです。その楽屋で役作りのために割かれる時間はあまりなかったように記憶しています。大抵みんな携帯の画面を見つめています。それではいい作品などできません。もっと物作りは楽しいんだ、という思いを関わることを通じて感じ、そこでできた作品を人に見てもらいたいと思えれば素敵だとおもいます。


資金・予算の考え方

TCUでは過去8年間で約10個の企画に資金の出資、機材提供、人材提供など行ってきました。それがでいたのは私がフリーランスの監督をやめて制作会社アクターズを作りそこで仕事を生み出す事ができたからです。しかし残念ながら主宰の速水が制作した作品以外90%が途中で消えて無くなるという悲惨な結果となりました。インディペンデント業界で頑張っている仲間をサポートしてきたつもりでありましたが、まだまだ日本国内では趣味の延長で関わっている人が多かった。これは現実です。現在はそういったことを避けるためプロとして活動をしている主宰の速水雄輔の企画のみを進行中です。

2020年からはコロナのこともあり(株)アクターズの業績が以前ほど良くないのでTCU映画への出資が叶わず、現段階で制作が動いている企画はIN ANOTHER LIFEのようにノーギャラです。しかし、TCUは欧米のように売上のシェアや権利を分配する仕組みを取ることでどんなに小さな形でも参加した人に還元するように考えています。日本では作品の劇場公開の売上げから2時使用の売上などキャストとシェアすることはあまりありませんが少しずつ日本も世界と同じシステムを取り入れたいと思っています。

実際に前作のIN ANOTHER LIFEは東映のオンライン配信で売り上げを出すことができ製作費の一部を回収できました。そして大した金額には至りませんでしたがキャストには売上のシェアをバックすることができた。たかだか数万円出会ったとしても、この小さな体験を少しずつ大きな体験につなげていきたいのです。大きなうねりを作るために小さいところから始める。大きくなればそこには自ずと予算をつけていけるという実体験がTCUの母体である映像製作会社(株)アクターズの12年の経営からも理解しています。将来を考え、今から足元をまずはみて一歩一歩始める。そこに未来を感じているのです。

ここ数年でさらに出資者を募った予算のある映画・特に海外との合作には力を入れていこうと思っています。


技術面・不可能はない

機材はアクターズとTCUが所有する機材で撮影しています。ほとんどレンタル費が出ないようにしています。現在撮影中の映画は照明はなるべく自然光を活かしている理由はいくつかあります。もちろん予算がかけられないのも一つ。しかしそれ以上に照明の数が少ないということはセッティングの時間を短縮でき、演出や役者の芝居の時間が長くとれるのです。つまり作り込みの時間が多くとれる。3テイクしかできなかったところを5テイクできる。また360度カメラが振れるので即興性や役者の芝居に制限をかけない撮り方ができます。例えばウォンカーウェイ監督はよくクリスドイル撮影監督と仕事をしていましたがほとんど関節照明。ナチュラルな柔らかい光、生活感、陰影を出すのにむしろ適しています。テレンス・マリック監督もステディカムで撮影し役者に自由な表現をさせるためナチュラルライトを最大限使うそうです。ブラックスワンのマシュー・リバテック撮影監督も予算の関係で照明を最大限減らして360度撮影する方法をとりました。撮影の一部にはCanon 7Dを使用しています。機材のサイズや規模で作品のクオリティが決まるわけではありません。これらの経験やノウハウを活かして、今映画を作っています。


インディーズへの誤解

最後に書きたかった事が、インディーズ映画を日本の多くの映画製作者が誤解している点です。(もちろん全員ではありませんし誤解していると言って批判しているわけでもありません)インディーズを経ていつかメジャーに行くんだ!と意気込んでいる若手の監督や俳優さん沢山いらっしゃいます。しかしよく考えて見てほしいのです。FOX SEARCH LIGHTという会社はインディーズ映画の配給ですが全世界に配給しているのです。日本ではインディーズ=下積み(アマor商業ではない)メジャー=商業作品、という変な認識になっていると思います。

インディペンデントはプロデューサーが独立した形で心から惚れ込んだ作品に対してお金を集めをして世界配給を狙うものです。(少なくとも国内の劇場公開)そこには今の社会を痛烈に描いたり、まったくちがった価値観を社会に投じることができますし、それが求められている部分も大きいのです。それに対してブロックバスター・メジャースタジオの作品とは日本のそれと似ていて、最初から予算が割り当てられ、キャストも表現も制限でがんじがらめです。表現の自由への制約という意味ではある意味CMと同じです。それが悪いということではなく全く違った表現の世界なのです。TCUではインディペンデントであり商業映画であるという状態を国内で作って行くことを目指しています。日本国内ではまだまだ欧米のようにオーディションで一発で良い役を得てデビューの階段を登るという仕組みはありません。才能のある人が作品を作れるような環境がまだまだ整備されていないと思っています。であるならば自分たちの手で小さくとも作っていきたいという思いでTCUを運営し、そして今も作品を製作しています。

是非興味がある方は参加いただければ幸いです。
t c u m e m b e r (at) g m a i l . c o m


どこから始めるか? | 演劇編 アットシアター

ミニシアターを立ち上げたきっかけは、都内の劇場がどんどん潰れて行く中、SNSで残念だ、と嘆くだけのアーティストが非常に多かったことに私が違和感を覚えたことにありました。もっと自分たちごととして考えられないものか?劇場はただの箱ではなく、レンタルスペースではなく、アーティストと観客がつながる生命線。文化の発信地。そういう認識になるためにはアーティスト自身がシアターを運営しなければ、と思い13名のアーティストに参加いただき設立した。

シアターを共同で運営するというのは会費で運営することだったのですが、13人で運営資金の負担をシェアしているので、そこで上映会や小さな舞台公演を行えば負担以上の収益になることを計算できた。コンスタントに活動すればそれだけファンにも認知してもらえる。年に1〜2回の公演や上映では不可能にちかいです。

どんなに少額でもアート活動からアーティストに利益を還元できることは素晴らしいことです。そしてアーティスト自身がそれを体験することで実感としてその体験が深まっていきます。例えば立ち上げ当初に小さな舞台公演をしましたが2,000円のチケットで20席を4回、16万円を売上、それをキャスト二人と演出兼音響照明+受付の私でシェアしました。一人だいたい5万円の収益になりました。稽古期間はもちろんシアターは使い放題。それに私はどちらかといえば映画監督なので舞台のように数週間や数ヶ月俳優にバイトを休ませて毎日稽古をすることに反対でしたので、出演者は皆通常のアルバイトをしながらワークショップに通う感覚で舞台稽古をしました。それで良いと思うのです。

毎月出演したり公演をプロデュースするのは不可能ですが、13人のアーティストが交互にやれば可能です。今後は演出家にも興味がある俳優や公演プロデュースに興味がある人たちにもこの取り組みに参加していただき、作品を作ればそこで収益が上がるという体験をしてもらいながら、このシアターを文化発信の拠点として育てて欲しいと思っています。
冒頭に書いた分業化により思考停止に似ていますが、ギャラが先にあって活動するのではなく、本来アーティストは活動し作品を発信して初めて収益というリターンをいただけるということを忘れてはいけないと思っています。

TCU舞台のプロデュースなどに興味があるアーティストはいつでもご連絡ください。
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